二十年目の初恋
休日 10

 純白のドレス。ピンクやブルー、グリーン、ゴールドやシルバー、真っ赤なドレスまで。

「わぁ、綺麗……」
 こんな部屋に居るだけで、お姫様気分。

「優華の好きなのを選んで」

「こんなにたくさんあると悩む」

「いいよ。ゆっくり考えれば。優華の人生最後のウェディングドレスなんだから」

「何点ご試着されても構いませんよ。ごゆっくり、お選びくださいね」
 と店員さん。

 やっぱり純白がいい。二度目だからこそ、もう一度真っ白な無垢な私に戻って……。気持ちだけでも、そうありたいと願っていた。
 悠介のお嫁さんになる。それはやっぱり特別なことで……。もう一緒に生活していても。

 私が選んだのは純白のビスチェタイプ。肩は出してウエストからはフワフワの生地が幾重にも重なった。

「綺麗なバストラインが映えますよ。良くお似合いです」

「すごく綺麗だよ」
 悠介は満足そう。

「今度は悠介の番よ」
 私は張り切って明るいライトグレーのタキシードを選んだ。

「悠介、素敵だよ」
 って言うと

「そうか ? じゃあ、これにするよ」

 二人の衣装が決まった。

「ご予約の日にちは、いつになさいますか ?」

「十一月二十一日の午前中でお願いします」
 って悠介は言った。

「はい。かしこまりました。十一月二十一日で承りました。朝九時においでいただけますか ?」

「分かりました。九時に伺います。では、よろしくお願いします」

 ブライダルサロンを出た。

「十一月二十一日って、もう決めてたの ?」

「六ヶ月が経って最初の土曜日だよ。しかも三連休だから、そのまま旅行しようと思ってるんだ」

「えっ ? 旅行 ?」

「そうだよ。新婚旅行のつもりだから。嫌か ?」

「嫌なんて言う訳ないでしょう。悠介、そこまで考えてくれてたんだ」

「海外は無理だけどな」

「ううん。悠介とゆっくり出来ればいいの。また温泉とかで、のんびりしたいな」

「そうだな。まだ行き先は決めてないから。北の方へ行けば雪の温泉もあるかな ?」

「十一月の終わりよね。どうなんだろう ?」

「探してみよう。優華の肌が今よりもっとスベスベになる温泉を……」

「もう、悠介……」
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