二十年目の初恋
休日 12

「気持ち良いんだろう ? 声、出してもいいよ」
 耳元で囁く。

「嫌よ。ご近所に聞こえちゃう」
 もう私は悠介に体を預けてる……。

「大丈夫だよ。窓、閉まってるし」

 シャワーで泡を流されて……。

「優華、おいで」
 そのまま私はまた悠介の魔法にカカッタ。お風呂から出て……

「あんなに声、我慢することないのに」

「だって窓が閉まってても反響して聞こえちゃうから。恥ずかしくて、外、歩けなくなる」

「じゃあ、後で思いっきり可愛い声を聴かせてもらうから」

「ばか……」

 悠介は笑ってた。お昼も遅かったし夕食は作らなくてもいいように、さっきスーパーで買って来たもので簡単に済ませて。

「悠介」

「ん ? なに ?」

「近い内に副学長に会って来ようと思ってるの」

「優華の気持ちが決まったってことなのか ?」

「うん。学長秘書のお話は、お断りしようと思ってる」

「そうか。でも本当にそれでいいのか ? 後悔しない ?」

「私ね。前の時ずっと仕事続けてて仕事では手を抜く訳にはいかないから、やっぱりちゃんと頑張ってたつもりだったけど、家庭を大事に出来てなかったのかもしれないって思うの」

「そんなことないよ。優華は頑張ってたんだと思うよ」

「今、考えると、してあげられなかったことがたくさんあるような気がして。でも悠介には、どんなこともしてあげたいの。寂しい思いをさせたくないから」

「本当にいいのか ? 専業主婦になっても」

「私を大切にしてくれる悠介が私にとっても一番大切なの。失いたくないの」

「失うって……。俺は優華から離れたりしないよ」

「うん。私も悠介から離れられないって思ってる。だからずっと悠介の傍に居たい」

「分かった。でもまた仕事を始めたくなったら遠慮しないで、ちゃんと言えよ。優華のことだから専業主婦に退屈するかもしれないし」

「そんなことないよ。それに今、私、専業主婦に憧れてるの」

「俺は素直に嬉しいけど。俺だけの優華は俺だけの奥さんになるんだな」
 そう言って抱きしめられた。

「優華、さっきの続き……」

 抱き上げられてベッドに連れて行かれた。
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