二十年目の初恋
二十年目の再会 11

 半年前、悠介はここに一人で引っ越して来た。私が家を出たのも半年前。

 一年前、悠介は離婚した。私が主人の愛人の存在を知ったのも一年前。考えたら何だか不思議だった。


 慣れた手付きで悠介が入れる香り高いコーヒー。

「はい、どうぞ。料理出来ないけど、コーヒーだけは自信あるんだ」

「いただきます。……うん。美味しい」
 ひと口飲んだだけでコーヒーの香りに体中が包まれたよう。
「でも、広いキッチン勿体無いね」

「じゃあ、優華が作ってくれる? 次の土曜は?」

「えっ? いいけど……」

「じゃあ、土曜の午後一時に迎えに行くよ。それから一緒に買い物に行って食材を調達して来ればいいだろう?」

 対面式キッチンのカウンターに腰掛けてた私を悠介は後ろから抱きしめた。

「優華……。泊まってく?」

「無理よ。明日、仕事だし」

「そうだよな。コーヒー飲んだら送るよ」


 悠介の車でマンションまで送って貰った。車を止めて

「ありがとう。あの……。色々昨日から……」

「俺、また優華に会えて、すごく嬉しかった。今度は土曜日にな。電話するしメールもするから」

 お互いの携帯の番号とアドレスは教え合っていた。

「おやすみ」
 悠介は私のほっぺにキスした。
「よだれでベチャベチャじゃないから安心しろ」

 私は思わず笑った。
「うん。おやすみ」

 走り去る悠介の車を見送って部屋に入った。

 潮風でバサバサになってる髪を早くシャンプーしよう。シャワーを浴びながら昨夜のことを思い出して……。あんな大胆なことが出来た自分が不思議だった。

 悠介だから、悠介だったから……。小さい頃から知ってた悠介だったから。離婚の傷も忘れさせてくれそうな気がしたから……。

 悠介の逞しい裸を思い出して、今頃、恥ずかしくなってきた。私、どうかしてる。
 悠介の胸は温かかった。私を抱きしめた腕は優しかった。あんなに激しく優しく愛されたこと今までなかった。

 悠介と一緒なら幸せで居られるのかもしれない。もう泣いたりしなくても、いいのかもしれない。このまま悠介に愛されて生きていけたら……。

 まさか離婚して一週間でプロポーズされるとは思わなかったけど。
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