二十年目の初恋
ずっと 6

「男の人って卒業して就職して仕事を続けて行く。基本的には変化ないよね。もちろん年齢は重ねて行くし仕事や社会的立場の変化はあるだろうけど。毎日の生活も傍に居て食事の支度とか身の回りのことをしてくれる人が産んで育ててくれたお母さんから奥さんに変わるだけでしょう? でも女は娘から奥さん、お母さん。立場も役割も毎日の生活自体がどんどん変化していくの。それだけじゃない。体も嫌でも変わっていってしまうから……」

「女の人は大変なんだな」

「私、次に生まれる時は男がいいな」

「えっ? 優華が男?」

「私が男じゃ、おかしい?」

「優華は女の方がいいよ。今の優華の姿形に生まれて来るべきだよ。そしたら生まれ変わっても俺はきっと優華を見付けられると思うから。また俺の優華でいて欲しいから……」

 思わず顔を上げて悠介の瞳を見詰めた。私のウエストに回していた悠介の腕が背中を抱きしめて、おでこにそっとキスされた。

「悠介。最初に私を見付けてくれる? 二番目じゃなくて……。悠介の初めてのプロポーズ、他の人じゃなくて私にして欲しいの……」

「あぁ、約束するよ。最初に優華を見付けるから。初めてのプロポーズは優華にするから。他の男に取られたりしない。もう絶対に泣かせたりしないから。優華は俺がきっと守るから」

「うん。約束ね。信じてるから。私、また次も女に生まれて悠介だけを待ってる」

「優華……。約束は必ず守るよ。俺達二人の出会いが運命なら、またきっと出会える。そうだろ? 来世も、その次も、その先も、ずっと俺は優華だけを愛して一緒に生きていきたい」

「悠介。嬉しい。ずっとずっと何度生まれ変わっても悠介と一緒にいたい」
 悠介の胸に顔を埋めた。幸せだった。

 雨の音がずいぶん静かになった。雷も遠くで微かに聞こえる。

「もう雷、大丈夫みたいだよ」

「だから怖くないって言ってるでしょう」

「無理しなくていいよ。ちゃんとしっかり抱きしめて眠ってあげるから」

「違うのに……」

「いいから、いいから」

 そのまま抱き上げられてベッドに連れて行かれた。そっと優しく降ろされて

「おやすみ」

 悠介の胸に抱かれて眠った。


     *



 それからしばらくして梅雨が明けて本格的な暑い夏がやって来た。悠介と優華は相変わらず熱いままで……。暑い夏も負けそうなくらいに。

 悠介は仕事が忙しくて遅くなることがあっても必ず帰ってから優華の作る愛情たっぷりの食事を摂った。

 優華はいつの間にかブログ仲間も増え、悠介の帰りの遅い日も退屈することもなく楽しい時間を過ごせるようになっていた。
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