二十年目の初恋
痛み 18
 さあ何を作ろうか? 

 悠介がシャワーを浴びている間に手早く出来る物。ご飯を炊いてる時間はないから、天ざるかな? 菜箸を片手に、かき揚げをカラッと揚げていたら、お風呂のドアが開いて悠介が出て来た。

「さっぱりした。良い匂い。なに?」

「ざる蕎麦と、かき揚げにしたんだけど」

「いいね。美味しそうだ」

「サイズ、どうだった?」

 ブルーグレーの半袖のTシャツと同素材の足首までのパンツ。
「ぴったりだよ。ゆったりしてて楽だし着心地もいいし」

「良かった。似合ってるよ。もうすぐ出来るから。あっ、家、ビールとかないけど買って来ようか?」

「ううん。きょうはいいよ」

「そう?」

 そして天ざる出来ました。テーブルに並べて

「悠介、出来たよ」

「おっ、美味そう」

「お蕎麦、おかわりあるからね」

「うん。美味い。かき揚げなんて久しぶりに食べるよ」

「そうなの? お蕎麦屋さんとか行かないの?」

「たまにはね。定食屋さんとかラーメンとか牛丼とか、いつもそんな感じだから」

「そうなんだ。お蕎麦、持って来るね」

「ありがとう。美味いよ」
 悠介が美味しそうに食べてくれると作り甲斐がある。

「美味かった。ごちそうさま」

「どういたしまして」

 ちゃんと後片付けは手伝ってくれる。二人だと早い。

 なんとなくテレビをつけてソファーに並んで座った。私はテレビ画面に顔を向けたままで

「悠介、明日、お休みになったって言ったよね」

「うん。休みだよ」

 悠介が私を見てるのが分かる。

「今夜、泊まって行く?」
 何で今更、恥ずかしいんだろう……。

「泊めてくれるのか?」
 私の顔を覗き込んでる。

「ベッド狭いよ。悠介の家みたいにクイーンサイズじゃないし」

「いいよ。その方が優華とピッタリくっ付いて眠れるし」

「シャワー浴びて来るね。悠介、眠かったら先に休んでて」

 着替えを持って、お風呂に入った。何でドキドキしてるんだろう……。

 誰かを自分の部屋に泊めるのは初めてだからかな?


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