二十年目の初恋
痛み 17
 まもなくチャイムの音が……。

「はい……」

「優華、俺」

 鍵を開けてドアを開いた。

「入っていい?」

「うん……」

 悠介が部屋に入って
「もしかして泣いてたのか?」

「そんなことないよ……」

 泣いてましたって目をしてるのに……。

 悠介が私を抱き寄せた。
「ごまかすな。何かあったんだろう? 言いたくない? だったら無理には聞かないけど……」

「悠介、結婚したら赤ちゃん欲しいよね?」

「優華が俺の赤ちゃんを産んでくれたら、そりゃあ嬉しいと思うよ。でも子供を作るために結婚したい訳じゃないから。優華と一緒に生きていきたいからプロポーズしてるんだ」

「でも悠介も私も一人っ子だから、子供が出来なかったら……」

「お世継ぎでも産むつもりか? 子供が出来なくても二人で幸せに生きることは出来るよ。それに優華はたぶん子供が出来たら掛かりっきりで、俺には構ってくれなくなりそうだからなぁ。優華を独り占め出来る方が俺は嬉しいけど」

「本当にそれでいいの? 子供が出来なくても後悔しない?」

「する訳ないだろう。優華と結婚出来なかったらメチャメチャ後悔するけど」

「スーツってことは仕事から直接来てくれたの?」

「うん。仕事、上手くいって早く終わったんだ。明日は休みになった」

「じゃあ、夕食まだなのね?」

「うん」

「何か作るから、その間にシャワー浴びたら?」

「そうだな。汗かいたし」

「ジャケット脱いで、ハンガーに掛けるから。あっそうだ。ちょっと待って……。きょう買い物に行って買ってきた物が。これ、悠介の部屋着にどうかと思って」

「良い色だね。ありがとう。早速、着させて貰うよ」

「タオルとバスタオルはこれね。お風呂はここだから」

「優華と入りたいんだけどなぁ……」

「駄目。一人で入りなさい」

 顔を見合わせて笑った。


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