二十年目の初恋
二十年目の再会 3
「無責任なこと言わないでくれる。奥さん居るんでしょう?」

「いや、まだ誰にも言ってないんだけど、一年前に離婚したんだ」

「えっ? なんで?」

「性格の不一致ってやつ? お嬢さん育ちそのままの生活に俺が付いて行けなかったんだ」

「そういえば、とびきりのお嬢さんと結婚したって聞いたような……」

「やっぱり釣り合わないのは不仲の元っていうのは本当だよな」

「ふ~ん。そうだったんだ。子供は?」

「出来なかったんだ。今思えば、出来なくて良かったのかもしれないけどな」

「悠介も苦労したんだね」

「お前は? 別居してるって、もう駄目なのか?」

「一年前に主人の彼女だっていう人から電話があったの。彼と別れてくださいって言われた。あなたと別れて私と結婚してくれるって……。あなたが別れてくれないから私って……。電話の向こうで泣いてるの」

「優華……」

「私なんにも知らなくて、すごく驚いて。それでも彼は私にはなにも言わなくて……。それが偶然、見たのよ。その彼女らしき人と主人が腕を組んで幸せそうに歩いてるのをね。可愛い子だった。男に愛されるために生まれて来たみたいな子で。もう駄目なんだと悟った。半年前に離婚届を置いて家を出たの。彼は絶対に私と別れる気はないって渋ってたけど。一週間前に区役所に出して来たからって電話があった。済まなかったって、それで終わりよ」

「そうか。そっちは子供は?」

「出来なかった。子供でも居れば違ってたかもしれないけど……」

「お互いバツイチってことか……」

「そういうことね」

「なあ、優華。これもなんかの縁だと思うんだ。二十年前にもう一度戻って俺たち遣り直さないか?」

「二十年前に?」

「それぞれの二十年は簡単に消したり忘れたり出来るほど軽いものだとは思わないけど……。でも今、俺たちが愛し合っても誰も傷付ける訳でもない。もちろん不倫でもない。優華はどう思う? 俺が嫌いか?」

「そんなこと突然言われても……。考えたこともなかったし……」

「俺は今すぐにでも、ホテルでも俺のマンションにでも優華を連れてって抱きたいくらい愛してるのに……。じゃあ、考えてくれ。俺と真剣に付き合うこと」


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