二十年目の初恋
痛み 20
「そろそろ寝るか?」

「うん」

 私のベッドはセミダブル。やっぱり狭い。

「寝返り打ったら落ちそうだね。ごめんね。狭くて」

「いいよ。密着して寝られるから。優華、眠っていいよ。見ててやるから、お前が眠るまで」

「えっ?」

「きょう、何か辛いことがあったんだろう? 俺が来なかったら何も食べずに一晩中泣いてたんじゃないのか?」

「…………」
 また涙が出て来た……。

「ほら、また泣いてる。泣きたいだけ泣いていいよ」

 悠介は私の髪を撫でて、そっと抱きしめてくれた。

 悠介の胸は、あったかい。初めて抱かれた時もそう思った。

 私は泣きながら悠介の胸で安心して眠った。

     *

 優華、俺の優華、俺だけの優華……。

 どんな夢を見て眠ってる? 辛い思いや悲しい思いをもうこれ以上させたくないんだ。

 俺の傍で、いつも笑っていて欲しいと願ってる。そんな毎日を優華にプレゼントしたいと思ってるんだよ。

 何よりも大切な優華を泣かせるようなことは絶対にしない。これからは、ずっと俺が守ってやるからな。

 肩にかかるくらいの綺麗な黒髪をそっと梳いて、眠ってる優華のオデコに、そっとキスして俺も眠った。

「おやすみ」

 この日の夜は、なんだか時間の流れが、ゆっくりゆっくり進んでいった。雨上がりの空は雲がいつの間にか居なくなって、星たちが輝き始めている。

     *

 そして新しい朝が……。

 淡いラベンダーカラーのカーテンを通して窓から明るい陽射しが射し込んで、二人は、ほとんど同時に目を覚ました。

「おはよう」

「よく眠れたか?」

「悠介の胸は、ぐっすり眠れるんだよ。知ってた?」

「そうか? 俺がいつも熟睡してるからかな」

「もう少し、こうしていたい……」
 悠介の胸に優しく抱かれたまま……。

「いいよ。いつまででも優華の好きなだけ」

「昨夜は来てくれてありがとう。悠介が居なかったら本当に一晩中、泣いてたかもしれない……」


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