二十年目の初恋
痛み 21
「優華、もう一人で泣くのは止めるんだ。いつでも傍に居てやるから。何かあったら俺を呼べば良いんだ。分かったか?」

「うん。ありがとう」

「お前、昔から泣き虫だったからなぁ」

「いつの話よ」

 悠介は笑ってる。

「もう悠介の意地悪。さぁ、朝ご飯、作ろう」
 ベッドから降りてキッチンへ

「何を作ろうかな」

 コーヒーを入れて、ハムとゆで玉子とレタスのサンドイッチ、グレープフルーツは半分に切って。

「悠介、出来たよ」

「うん。分かった」

 二人で食べていたら急に思い付いたように悠介が

「優華、今度の土日は絶対休みか?」

「ん? 何で? お休みだけど」

「旅行しないか? どこかの温泉にでも、どう?」

「温泉、いいね。でも今から取れるの?」

「旅行代理店に友達が居るから、結構キャンセルとかあるんだ。一日前でも取れたりするよ」

「へぇ、そうなの? 温泉か。私、久しぶりだよ」

「よし。何が何でも取るぞ。楽しみにしてて」

「うん。すごく楽しみにしてるから」

 木曜の夜、悠介から電話。
「取れたよ。温泉旅館の予約。土曜の朝七時に迎えに行くから、ちゃんと支度して待ってろよ」

「すごい。取れたの? 分かった。待ってるから」



 そして土曜日。一泊分の荷物を持って迎えに来た悠介の車に乗り込んだ。

「昨夜はなんだか眠れなかった。遠足の前の子供みたいでしょ?」

「実は俺も」

「えっ? 悠介も? 私たちまだ子供なのかな」

「みんな昔は子供だったんだから良いんだよ」
 そう言って悠介は笑ってた。

 車は街中を抜けて高速へと入って行った。

「晴れて良かったね。もうすぐ梅雨だから」

「俺は優華と一緒なら、梅雨でも大雪でも関係ないけど」

「雪の季節の温泉も良いよね」

「冬にもまた行こうな。ってまだ着いてないけど」


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