二十年目の初恋
事件 8
 今夜の悠介は、いつもよりもっと優しくて何度も何度も
「優華、愛してる」

 耳元で囁かれて悠介の熱で、このまま溶けてしまいそう……。

 どうしていいのか分からないくらい、自分の体なのにコントロール出来なくて、悠介の思うままに私は翻弄され続けて、いろんな私が存在することを思い知らされた。

 どの私も大好きで愛おしくて、それよりもっと悠介が愛おしくて……。私の全てを悠介の全てで愛してくれることが泣きたいくらい幸せだった。

 私は泣いていた。悠介の腕の中で……。

「どうして泣いてるの?」
 私の髪を撫でながら聞いた。

「幸せだから……。悠介を愛してるから……」

「優華、大切な優華、俺だけの優華、愛してる」

「離さないでね。ずっと悠介の傍に居たいの……」

「優華は俺のものだから離す訳ないだろう。誰にも渡さないよ。絶対に触らせない」

「悠介……」

 私はそのまま意識を手放した……。
 心も体も充たされて……。


 いつか……。

 ずっと先、歳をとって、この世界から消える日が来たら私は悠介の腕の中で旅立ちたい。

 もしも病に侵されて辛い痛みと向き合うことになったとしても、悠介の腕の中でなら、きっと痛みも和らぐと信じられる。


 気が付いた時、私は悠介の腕の中に居た。

「優華……」

 穏やかに聞こえてくる悠介の声が心地好くて…… 。

「大丈夫……。悠介の腕の中は私が一番安らげる場所なの」

 悠介は私のおでこに、そっとキスして、そのまま二人は吸い込まれるように眠った。

 お互いの体温を逃さないように抱き合ったままで……。


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