二十年目の初恋
事件 7
「なに?」

 悠介は寝室の隣りの部屋を見せてくれた。

「ここ使ってないから優華の部屋にしていいよ。優華の荷物ここに置けばいいだろう?」

「和室あったんだ。7畳半もあるのね」

「奥にクローゼットもあるし優華の物なんとか入るだろう?」
 和室に入って悠介が言った。

「なんとかどころか充分よ。ありがとう。悠介、お世話になります」
 私は畳にきちんと正座して三つ指ついてお辞儀した。

「ばか……」
 頭をくしゅくしゅってされた。

「お世話になるのは、俺の方だと思うけど」
 悠介の笑顔。

「どんなお世話して欲しい?」
 立ち上がりながら聞いた。

「そうだな。外食じゃなくて優華の作る美味しい家庭料理が食べたい」

「それから?」

「一緒に、お風呂に入りたい」
 って悠介に抱き上げられた。

「きゃっ!」
 そのまま、お風呂へ連れて行かれて……。


「あぁ、さっぱりした。優華、あのピンクのシャツ。はい」

「ありがとう」
 悠介、ちゃんと洗濯してくれたんだ。

「湯上りのビール飲むだろう?」

「うん」
 ピンクのクレリックシャツに着替えながら返事した。

「あぁ、美味い」
 本当に美味しそうな満足げな顔の悠介。

「うん。美味しい」

 悠介の傍で飲むビールが一番美味しい。どんなに高級なバーで、お洒落なカクテルを飲むよりも……。


「そうだ。優華のご両親の都合どうだって?」

「今週は親戚の法事があるんだって。あと来週は父が出張らしいから、その次の週が良いって言ってた」

「家も今週は親父が仕事で、来週は母さん同窓会とかで、その次の週が良いって言ってたけど。じゃあ決まりだな。それまでに引っ越し済ませよう」

「うん。でも……。もう一緒に住んでますって言うの?」

「嫌か?」

「ちょっと恥ずかしい」

「優華を守るために一緒に住むんだから、恥ずかしくないだろう? 俺たちもう子供じゃないんだよ。三十五歳の立派な大人なんだから」

 そのまま……。立派な大人の悠介にキスされてた。優しくて甘いキスを……。


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