強引同期が甘く豹変しました
矢沢はきっと、別れたばかりの元カレが女と手を繋いでいたなんて、私が傷付いてるかもとか、気にしてるかもとか。
多分あれこれ考えて、咄嗟に気を遣ってくれたんだと思う。
だから同じようにこっちも手を繋いでいる姿を見せる、なんて。まるで反撃ともとれるような行動をわざとらしく見せつけてくれたんだろうなって。
そんな風に思えた。
「矢沢、ありがと」
しばらく歩いて、駅を出てからそう言った。
もう、私たちの姿は康介には見えていないはずだ。
「手…もういいよ?」
言いながら、矢沢からそっと、手を離そうとした。
だけど矢沢は何故かその手を緩めることなく、ギュッと握り締めてくる。
「勘違いすんなよ」
「えっ?」
「別に、さっき元カレに遭遇したからとか、おまえが嫌な気してるかもとか、そういうの考えて繋いだわけじゃないから」
「えっ?じゃ、どういう…」
「は?繋ぎたくなったから繋いだだけだ」
…繋ぎたく、なったから…繋いだ?
「なーんてな。ちょっと俺酔ってんのかも。おまえと手繋ぎたいとか思うなんて」
ふざけたようにそう言って、矢沢は笑う。
「…本当、酔ってんじゃない?」
なのに私がそう返すと、繋がれていた手に、またギュッと力が入った。
矢沢は本当に、酔っているのかもしれない。
だってこんなの、変だし。やっぱり変だし。
どうしてまだ私たちが手を繋いでるのか。考えれば考えるほど、わからない。
でも、不思議と嫌ではなかった。
矢沢の手は大きくて、ゴツゴツしてて、男の手って感じなのに。
私の手を包むようにそっと握るその手は、温かくて、優しい手で。全然…嫌じゃなかった。