御曹司と愛され蜜月ライフ



『つーかおまえさあ。なんでそんな、がんばっちゃってんの?』



がんばるのは、隣りに立って恥ずかしくない存在でいたかったから。

あなたに、褒めてもらいたかったから。



『撫子は、基本的にやりすぎなんだよね。男なんて結局は自分より劣って守りたくなるか弱い女子が好きなんだから、スキルなんてほどほどなくらいでいいんだよ』



だって、女だからって“ほどほどでいい”なんて甘えでしょ?

私は、ちゃんと精いっぱいがんばりたい。100%の自分で、いつだって勝負したい。



『別に俺は、「もっとがんばって欲しい」なんて言ってなかっただろ? 勝手に突っ走った末心変わりを責められたって、自業自得としか言えねーわ』


『あーハイハイ、つまり自分は優秀だって言いたいんでしょ? どうせあたしたちは、撫子から見れば落ちこぼれかもね』



ねぇ、待って。私、そんな話をしたいんじゃない。

伝わらない。もういいよって背を向けられたら、いくら叫んでも私の声なんて届かない。


じゃあ私、がんばらなければよかったの? そしたら最初から、何も失わずに済んだ?

あんなふうに──……つらい思いをすることも、なかったの?


それなら私は、もうやめる。一生懸命がんばることを、やめる。

報われなかったときのことを考えたら、何かに打ち込むなんてこわくてできない。適当で、ほどほどでいい。


恋愛も、したくない。またあんなふうに傷つくことがあるかもしれないなんて、もう耐えられない。

私は誰も、すきにならない。すきになんて、なりたくない。


……すきになるつもりなんて、なかったのに。



『──卯月のこと、見つけられてよかった』



私はまた、懲りずに恋をした。

しかも相手は、自分とは住む世界が違う大企業の御曹司で。

ほんと私、どこまで馬鹿なんだろう。こんなの全然、笑えないよ。
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