バンテスト魔法書の保持者
夜、私は図書館で本を読んでいた。


というか、子供達に囲まれていた。


「リューラ!ご本読んで!!」


「前のやつ!『竜と幻の秘境』!!」


「いや」


さっきから断っているが、頑固に頼んでくる。


「じゃあ、今読んでるやつでいいから!」


「これ、子供向けじゃない」


「いいじゃんか!えっと、理不尽な何とか!」


「違うよ!『理不尽な世の中』だよ!」


「そう!それ!」


さっきからごちゃごちゃと騒ぐおかげで、本のページがなかなか進まない。


もうすぐ読み終わるんだけど。


『俺は、この世界を変える。


変えてみせる、絶対に。


俺がこの世界の先導者となって、誰もが笑って暮らせるような世界を作ってみせる。


俺はそのためなら何でもする。


そして』


「リューラ」


私が途中まで読むと、リオウの声と共に本が取り上げられた。


「リオウ、返して」


「駄目だ。司教様の部屋に行くぞ」


あ、そうだった。


確か呼ばれてるんだっけ、私。


「ん、わかった」


「じゃあ行くぞ」


リオウは本を自分の脇に挟んだ。


あ、司教様と話をしてるとき読もうと思ったのに。


「はいはーい、皆!もう寝る時間ですよ!」


ラルさんがそう言うと同時に、教会の鐘が鳴り響いた。


私とリオウは、ラルさんと入れ替わるように図書館を後にした。


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