バンテスト魔法書の保持者
その時、使い魔は主人の見たものを見れる。


逆にいえば、主人が気を失っていれば使い魔の方は何も見れない。


べつに、自分の意志で外に出ることも可能だ。


だけど、ルクスとイザークは人に警戒心が強いため、自らの意志で理由も無く外には出ない。


聖獣という立場だけあって、貴重な存在だから人に狙われやすいせいでもある。


長い時を生きるルクス達は、私には想像も出来ない経験をしてきたのだろう。


「イザーク、久々にお前と共に風を感じたい。
どうだ?」


「リオウ様の御命令とあらば」


共に風を感じる。


このちょっとくさい台詞を言う時、イザークとリオウは空中散歩をする。


リオウがイザークの背に乗るだけだけど。


「リオウ、見つかったら‥‥‥」


「わかっている。見えないように結界を張るから大丈夫だ。では、行ってくる!」


リオウは鮮やかにイザークに飛び乗る。


それを確認すると、イザークは羽ばたいた。


「参ります」


そうイザークが言うと、瞬く間にリオウ達はいなくなった。


サァーと気持ちのよい風が吹く。


リオウ達が居なくなると、ルクスは私の目を見て言った。


「最近、魔力が異常に乱れている。修正するのも一苦労だ。大丈夫か?」


そう優しくいう言うルクス。


やっぱり、魔力の乱れを修正してくれていたのか。


私はルクスの背中を撫でて言った。


「大丈夫。ありがとう、ルクス」


その日は、ルクスと共に木陰で帰る時間まで動かずただただ休んでいた。


その時間は、私にとって一時の、だけど大きな癒やしの時間となった。





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