Under the ROSE
音楽が止み、2人はそっと手を離す。

「お相手をありがとうございました、姉上」

アルフォンスは青い瞳を僅かに細め、美しい姉に微笑んだ。

「こちらこそ、楽しいひと時をありがとうございました、殿下」

ドレスをつまみ、頭を下げる姉に、アルフォンスは哀しげに眉を寄せる。

「そのような物言いはおやめ下さい姉上。私は貴女の弟なのです。同じ血を分けた兄弟にまで、気を使うことはありません」

「いいえ、殿下。同じ血などとおっしゃいませんよう。私は卑しい身分なのです。本来ならばこうして殿下の前におりますことも許されぬ立場」

頭を下げたままそう言うと、チラリと視線を横に向けた。

空席となっている玉座の隣に立つ妃殿下が、美しい顔を歪めてこちらを見ていた。


──このような宴の席でまで、そんな醜い顔をなさらずとも良いではありませんか、義母上。


セリスはアルフォンスには見えないよう、紅い唇の端を上げた。

「姉上……」

妃殿下とは違い、憂い顔の優しい義弟に、セリスは柔らかい微笑みを向ける。

「さあ殿下。先ほどからレゼッタ姫がお待ちですわ。あまり婚約者をお待たせしてはいけません」

セリスが視線を向けた先には、茶褐色の髪を美しく結い上げたかわいらしい姫がいた。

踊っている間中、ずっと羨望の眼差しで見つめていた、隣国の王女。

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