Under the ROSE
セリスと比べれば多少見劣りはするものの、それでも愛らしい顔立ちをしていた。

アルフォンスは名残惜しそうにしながらも、セリスの傍を離れ、姫の元へと向かう。

今宵は、皇太子アルフォンスの婚約パーティが開かれていたのだ。

近年力を強めてきた大陸のウェルド国に対し、牽制の意味を込めて結ばれた協定。この婚約も、その中でのこと。

つまり、政略結婚というわけだ。

それでもレゼッタ姫は末の姫であるからか、天真爛漫な無垢な少女であった。

実の姉であるセリスと踊っているだけで、揺れる心が面に出てしまうくらいに。


「かわいらしいことだ。……私とは違って」


1人になったセリスは、先程までの柔和な笑みを消し、かわいらしい2人の姿を鼻で笑った。

あの姫ならば、アルフォンスも幸せになれるだろう。


──恐らく、そんな日は来ないだろうが。


未だキツい瞳でねめつけてくる妃殿下を心の中で嘲笑いながらも、それをおくびにも出さず、一礼した。


──そう、そんな日は来ない。


義弟は、私の手によって、排されるのだから……。





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