溺愛伯爵さまが離してくれません!
私の為にここまでしてくれるなんて。
なんて伯爵さまは優しいんだろう。

張りつめていたものが、ぷつんと切れるように、私の瞳から涙が溢れ出てしまいます。
止めようとしても流れ続ける涙は、ぽたぽたと足元に落ちていき・・・。

「・・・っっ・・・」

泣き顔を見せたくない私は、その場にしゃがみ膝に顔を隠して肩を震わせました。

こんな弱い私を伯爵さまの前では見せたくなかった。
無様な姿を・・・!

伯爵さまは泣く私の前に同じ様にしゃがむと、私をそっと抱きしめてくれたのでした。
仄かに香っていた伯爵さまの香水が、抱き寄せられ身体が触れた時、より強く香ります。

突然の行動に、私は石になったかのように動けなくなってしまいました。

「は・・・伯爵さま・・・」

「怖かったね。そんなに強がらなくてもいいんだ、リーナ」

抱きしめながら優しく頭を撫で、そう囁く伯爵さま。

初めて知る好きな人の体温は、思ったよりも温かくて。
それでいて、その温もりはどこか私を切なくさせ。

私は恥も外聞も捨て、伯爵さまの中で声を上げ泣いてしまったのでした。
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