溺愛伯爵さまが離してくれません!

私の心は複雑でした。

伯爵さまが他の女性と一緒に蜜な時間を過ごしている、という事実を突きつけられたショックと、それを見せつけて私をからかう態度に対する怒りと。

・・・ええ、分かっています。
私がそのような感情すら伯爵さまには持ってはいけない、と言う事を。

けれど、そこまで出来た人間ではない。

「もう少し、自分を大事になさって下さい・・・伯爵さま」

つい、そんな言葉が出てしまったのでした。


その言葉に少しムッとした表情を浮かべる伯爵さま。

「・・・つまらない反応。面白くない」

伯爵さまは、そのまま何も言わずに湯あみへと向かわれました。

・・・怒ったのかしら?
でも、侍女である私が伯爵さまに感情をむき出しにさせるわけにはいかないし。
どう、反応すれば良かったのか。

また私の口からは、大きなため息が出てしまいました。
そして、窓を開けても依然残る移り香に耐え切れず、思わず部屋を飛び出してしまいます。



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