魔術師の瞳
召喚魔術

夕食




寮のベランダから救急車を見た。
あざみが先程姫島と戦った場所には大勢の野次馬。真っ赤な地面はなんとなく分かるが、マネキンの破片は一つも見当たらない。

この学園内での負傷者は全員京極家が経営する病院へと搬送される。
魔術師の秘匿と言うものだ。外界の人間に魔術を知られてはならないし、魔術によっての怪我は魔術師にしか癒せない。
日本でも唯一の魔術師による魔術師のための病院は一般患者お断りで名が知れていた。
あの怪我だと一ヶ月は病院から出られないだろう。病院勤めの遷宮の人間が見れば一発で犯人が知れてしまいそうだが、その前に姫島自身が一ノ瀬家に報告しそうだ。

夕暮れ時の心地よい風を十分堪能しながら欠伸をすると、部屋に戻る。

この学園の寮は中等部から一貫して同じ部屋だ。
無論ランクが上がれば変わる可能性があるが、ランクが上がるなんて年に数人いるかいないか。高ランクと言われるJ以上になるとほとんど変動はない。

R以下だと四人一部屋、Jで二人一部屋。QはLD、KだとLDK。Aだと急にランクアップして2LDKかつ広々としたベランダつきだ。
ランクEX基本学園に二人しかおらず、前年度まで京極家がいなかったため最上階一部屋を蒼蓮一人が使用していた。恐らくは5LDK以上ある。
本日からはめでたく同居人が出来た蒼蓮を微笑ましく思いながら、その出会いに関しては疑問を持つあざみ。

生まれてこの方あれほど仲良さそうな友人は始めてみた。
往年の友人のような雰囲気だが、その出会いも長さも彼女は知らない。
知るべき必要は微塵もないが、蒼蓮の友人として気になる。

いつか聞いてみよう。なんて決意をしながら制服を脱ぐ。
授業時間が終われば私服の着用が許可される。そのため夕飯時になれば校内で制服をつけている生徒の方が珍しくなるのだ。



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