強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】


「腹は減ってるか」

「まあ、それなりに」

「そうか。自由に食べてくれ」


そう言われて箸を取るけど、どこからどう手をつけていいものやら。

全く食べないのも失礼だと思い、篤志さんの仕草を見ながら、少しずつ料理を口に運んだ。


「口に合うかな」

「ええ、美味しいです」

「それは良かった」


篤志さんはビールを飲みながら、前菜を平らげる。

するとそのタイミングを見計らったように、お吸い物が運ばれて来た。

障子が開くたび、仲居さんが仁王立ちしている高浜さんにビビっている様子がちらちら見えて、落ち着かない。


「僕は情けないことに、日本酒が苦手なんだ」


篤志さんはそんなことを話す。

そうか、だからビールを飲んでいるのね。日本酒が苦手なんて、知らなかった。

お吸い物のお椀の蓋を取るのに苦労していると、篤志さんがそっと手を出す。

そして、お椀のふちにぎゅっと力を入れ、蓋を外してくれた。


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