強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「どうしてそこまで、この政略結婚にこだわるの」
ぽつりと呟くと、父も囁くように答えた。
「お前のお母さんとの約束なんだよ。絶対に、政治の世界で成功すると。この国を良い方に変えるため、生涯活躍するようにと」
「えっ……」
今まで、父の口から母のことが語られたことはほとんどなかった。
珍しいことに驚き、思わず顔を上げてしまう。
「そのためには、今の地位を確固たるものにしなくてはならない。私はお前のお母さんが望んだように、この国を変えるんだ」
そんな。
「お母さんは……お父さんの足手まといにならないように、身を引いたのね?」
そう聞くと、父はゆっくりとうなずいた。
愛人や隠し子がいるなんて世間に知れたら、父の政治生命に危機が及ぶ。
そう考えた母は、少しの援助だけを受け、一人で私を育てることにしたのか。
母は母なりに、本気で父を愛していたんだ……。