強引でもいい、私を奪って。【SPシリーズ大西編】
「先輩たちに何か買ってきてもらうよ。霧子ちゃん、何が良い?」
また。『霧子ちゃん』だって。
もしかして大西さん、私のことを子供扱いしている?
あの夜泣いていた私のことを、迷子になった子供程度に思っているのかも。
そう思うと、無性にむかむかした。
このひと優しそうだけど、見た目に似合わずけっこうガサツだわ。
「『ちゃん』はやめてください。呼び捨てでけっこうです」
いらないなら食べなくていい!
パンを元の場所に戻しながら言うと、大西さんは笑うのをやめた。
「何か怒ってる?」
「怒ってません。笑われたって怒ったりしません。もう二十六歳だし」
「あ、そうなの。じゃあ一個下だ。年上は敬うように」
大西さんはまったく悪びれもせず、私の頭をぽんぽんとなでる。
敬うって……一個しか違わないんでしょ。ほぼ一緒じゃない。
「じゃあ、これからよろしくね、霧子。俺は悠。呼び捨てしていいよ。対等でいこう」
はるか……名前まで、女みたいじゃない。
なんかこの人、初めの印象とちょっと違う。お調子者っぽい。もっとカッコイイ、無敵のヒーローかと思っていたのに……。
私は若干がっかりしながらも、どこかでホッとしていた。
だって、この見た目で中身まで完璧な人だったら、好きになってしまうもの。
もう、私は誰とも恋をするわけにはいかないんだから……。
こうして、私と悠の、奇妙な生活が始まったのだった。