強面勘違い年下男と見た目詐欺なアラフォー女
『訳あり恋人がいてもいいっす。
俺とちゃんとしたお付き合いをして下さい』

いやだから、いないって恋人。

いても2次元とかそういのになると思うし。

私の体を毎日触っているのも尻尾が長―いニャーンと鳴く3匹の猫だけですし。

いやそれよりも私38歳だよ!?

『…私38歳ですよ?年上好きですか?それともからかってるんですか?』

『ほら、そうやってワザと話を逸らす。
こういう時大抵の女性って男を焦らしたりして戯ぶんですよね。
なのに緒川さんはうまくかわす。
これって相当手慣れてるって言いませんか?』

ダメだ。

コイツには何かバリアが張られている。

白旗を揚げても黄色い旗に見える魔法にでもかかってるのか。

何を言っても私には、というよりも私が誰かの愛人ポジ設定になっている。

顔が恐いんじゃなくて頭の中が恐かった人なんだね後藤さん。

『ああ、あとそのさん付け止めてくれませんか。会社ではいいっすけどプライベートではさん付けは止めて下さい。距離を感じます』

距離も何も、私は未だ返事を返していませんが?

『今、返事返してないのにって思ったんじゃないんすか?』

『思いましたよ。なんでこう話が進んでいるのかなとも思いました。
お付き合い云々は考えさせて下さい。
そして私には恋人はおりません。
しかも訳ありな恋人なんて存在しませんから!
どっからそんな発想がでてきたんですか!?
しかもまるでわたしが愛人ポジみたいな!』

『へぇー?そんなに力説すると返って怪しまれますよ?』

『怪しまれようが構いません、いない存在をいるというイタイ女にだけはなりたくありませんので!』

『ホントにフリーなんすか?』

『ホントにホントです。でもお付き合いの件は考えさせて下さい』

『ああ、相手の男にも相談しなければならないんすね。いいっすよ待ちます』

『~~~~~~』

地団駄を踏みたい!!!

ビルが壊れてもいいくらいダンダンダンっと踏みたいこの気持ち!!!

『じゃあ今日から宜しくフミさん』

『!!!』

『会社ではちゃんと緒川さんと呼ぶんでご心配なく』

そう言って外回りに出たゴトウクン。

入れ替わりに帰ってきた木田さんと人見さんが、私の顔を見て

『ヒッ』

と飛び上がった。

曰く般若の顔をしてて額に青筋がたっていたそうだ。
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