隣の彼は契約者
04*調子狂う


 指したまま開いた口が塞がらない。
 それは目先に立つ相沢先輩も同じなのか、今まで見たことないほど目を見開き固まっている。

 そんな私達が異常に思えたのか、躊躇った様子で大橋さんが口を挟んだ。


「もしや……お二人お知り合いでした?」
「「いいえ!」」
「え?」


 ハモってしまったことに瞬きされるが私は必死に考えていた。
 なぜここに彼がいるのか、絵師ってなんなのか……沸き上がる疑問よりもただこの場を切り抜けたい。その一心で早口でまくし立てた。


「クールで無愛想の仕事人間かと思えば意外と俺様で可愛い付箋を持ってた隣の席の先輩と間違えました!」
「二年目のくせしていまだ仕事が遅い元気バカかと思えば意外と料理上手だった隣の席の後輩と間違えた!」
「おもくっそ本名で呼びあってましたよね?」


 冷静な指摘に沈黙が続く。


* * *


 ああ、なんでこうなってしまったんだろ。
 夢なら夢で早く覚めてほしい。
 現実ならテーブルの角で頭強打して記憶喪失になりたい。
 そして新しい人生を歩みたい。

 そう、切に願いたくなるのは相沢先輩のせいだろう。
 不機嫌そうに腕組されている上に、真正面に座っているのが落ち着かない。

 もうっ、せめて隣に座ってよ!



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