隣の彼は契約者

03*8



 絵心がないせいか、どれも素敵すぎて自分の作品になんてもったいなさすぎる。ひとまず、美鶴ちゃんと大橋さんが言っていた二人を並べてみた。

 明星カオリさんはキラキラが散りばめられた少女漫画絵。
 ふんわかと可愛らしい画風だけど、オフィスの話にしては華やかすぎるかもしれない。

 みやびふみさんのはシュっと線が細く、明星さんよりは大人っぽい少女絵。
 少し服装が古っぽい感じがするが、制服なのを考えるとあまり気にならないのかもしれない。何より優しい雰囲気があって好きだ。

 素人目だが、もし可能ならみやびさんに描いてもらいたい。この人が描く隣の彼を……見たい。
 そう一人で頷いてると、バタバタと何やら多い足音と男女の声が近付いてきた。


「いいじゃないですかちょっとぐらい。まだ来てないんでしょ?」
「そういう問題じゃ……って、大野!?」
「え?」


 突然驚いたように苗字で呼ばれ、反射的に顔を上げる。が、大きく目を瞠るどころか、私も席を立ってしまった。


「な、なんで……」


 震える手でつい()してしまう私に戻ってきた大橋さんは瞬きする。
 けれど、気にすることなく連れてきたもう一人に手を向けた。


「まひろ先生、ご紹介します。ウチで専属絵師してもらってる、みやび ふみ先生です」


 その紹介に私の手から落ちた絵が“彼”の足元に届く。名前ははじめて聞くのに、よく知るその人は──。


「相沢先輩ーーーーっっ!?」


 紛う方ない、まさに“隣の席”の男性(ひと)だった────。



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