隣の彼は契約者

01*4



 突然耳元で発せられた声に飛び跳ねる。
 慌てて振り向くと、いつからいたのか缶コーヒーを持った相沢先輩が顔を覗かせていた。眠そうに見える彼とは違い、私の顔は真っ青。


「ななななななん!」
「ナン? この辺にナンの店はないだろ。俺はチョコナンが好きだが」
「あ、美味しいですよね。私も好……って、違いますよ!」


 同じ食の好みに嬉しくなるが、それは一瞬。
 慌てて否定すると、先輩は片眉を上げる。
 一八十ちょっとある長身に見下ろされると鬼気迫るものがあるが、携帯を隠した私は抗議した。


「きゅ、急に後ろから声をかけないでください!」
「お前が呼んだんだろ?」
「よ、呼んでませんよ! あと勝手に携帯を覗き込まないでください!」
「なんだ……エロサイトでも見てたのか?」
「バッカーーーー!」


 真顔に顔が真っ赤になると、大急ぎでその場を立ち去る。周りは何事かと見るが、今の私は気にする暇も余裕もなかった。



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