隣り合わせ
そして、振り向きながら、亮は…。


「麻衣から聞いたか?」


「図書館で会ったんだ!」


「あっそ!麻衣によろしく言っといてね!じゃっ!」

あっさりと言ってくれるじゃん!


亮は、カウンターへ向かった。


俺。マジで流されてないか?


俺にとって、麻衣は…?


着替えながら、ふっとため息が出た。


バイト先から、自転車の鍵を付けた時。


ふと、目に何かが入ってきた。


自転車のカゴの隅に、白い紙が結んである。


なんだ?


手に取って、丁寧に折ってある紙切れを開いた。


【今日は、突然私の気持ち言っちゃって、びっくりしたよね?

でも…言ってよかったと、思ってる。

敦君は、違う人を見てるって分かってたけど…。

麻衣】


あのさー!


これって、言って後悔してんの?


どうなの?


なんで、いい子してんの?

恋って、そんなもん?


そんな事を思っていたら、何だか自分自身の事ような、錯覚に落ちた。


今の俺も…?


原田さんの、前では。


いい奴になっている。


麻衣の手紙をかばんに仕舞い込んで。


思ったんだ。


『しばらく実家に帰ろう』

今の環境から離れたくなった。


一人になりたかった。


夏の終わりが、胸を熱くしたんだ。
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