きみが望めば
目を閉じたまま、ラファは口元を上げて微笑んだようだった。ソラとよく似ている微笑みだった。
「いいか、この香水をおまえにかけろ。たっぷりだ。この香りで王子を魅了できるだろう。あるいは、まぁ、なんとか上手く行くはずだ。ファンタジーだからな。」
苦しげなラファ。
「うん、それで?今つければいいの?」
「そうだ。」

入り口に人の気配がしてきた。
白馬の蹄の音と、人の足音が聞こえる。

「俺は一旦そばを離れる。」
「一緒に居てくれないの?」
ぎゅっとラファの服を掴んでいた。
ラファの手が重なる。


「このままでは、襲ってしまいそうだ。」
顔が熱くなる。
ラファはあたしの手に小瓶を握らせていた。
そしてそっとあたしを入り口のほうへ押しやった。
「つけろ。大丈夫だ。上手くいく。」

あたしは不安となぜか寂しさを感じていた。
苦しげに見つめるラファの前で、小瓶からピンクの液体を手首につけた。耳の後ろに。首筋に。鎖骨のあたりに。

金色の瞳が妖艶に輝いていて、あたしは身体が火照るのを感じた。
ラファはふっと微笑むと、そこからいなくなっていた。
< 52 / 175 >

この作品をシェア

pagetop