夕やけ雲
「さむ〜っ」
靴を履き替えて外にでると、
つめたい風が肌に突き刺さる。
もう、秋もそろそろ終わるのか……。
「こんなんでさむがってたら、
冬なんてもたねぇじゃん。
髪の毛おろしたら?」
学校があるときは、
肩下までのびたストレートの黒髪を
ポニーテールにしている。
「これ、きにいってるんだもん……」
だれかさんが、あたしが見ていた
ヘアーアレンジの雑誌をのぞきこむと、
そのままポニーテールの子をゆびさして
『これかわいい』って言っていたから。
それに、おろしてるとジャマになるし……。
「じゃあさ、なんかあったかいもんでも食う?」
あったかい……あったかい……
「……やきいも!
そういえばあたし、
今年やきいも食べてないよ!?」
タイミングよく、遠くで
いしや〜きいも〜♪って鳴ったのを、
あたしはききのがさなかった。
「ふっ……いまのきこえたんだ。
あゆ、耳だけはいいからな」
「耳だけ“は”ってなによ、耳だけ“は”って!
それにいま、鼻で笑ったでしょ!」
……あぁ。
あたしってほんとに、
かわいくない───。