夕やけ雲
“あゆ”
そう呼ぶ人は数すくなくて、
そのなかでも、
キミに呼ばれるこのなまえはとくべつ。
「わりぃ。走ってきたんだけど、
……まった?」
顔の前で手をあわせてあやまっているけど、
足音をきいていたあたしにはバレバレだ。
「歩いてる足音きこえたんだけど」
そう言うと、彼は笑ってごまかした。
「べつに、いそがなくても大丈夫だよ。
光輝と帰れるだけでうれしいから……」
ボソッときこえないようにつぶやいたのだけど、
ほんとはきこえていてほしい。
だけど……
「ん?なんか言った?」
キミはずるいなって、思うよ……。