◇君に奇跡を世界に雨を◇
それから、数日後。
私は無事に退院した。
退院するまでの数日間。
毎晩夜中にベッドを抜け出して、あの窓の前でユウを待ってみたけれど、もう、ユウはあらわれなかった。
あれが、本当に最後だったんだね。
何度かユウの病室を覗いてみたけれど、ベッドの上で眠るユウは決して目覚めることはなく、
シューパー、シューパー
ただ静かに規則的な呼吸を繰り返していた。
この呼吸が、いつ止まるのかはわからない。
でも、いつ止まってもおかしくないのは分かってる。
だって、ユウはもういってしまったんだから。
空に浮かんだ、大きな白い方舟に乗って。
『ぼくは幸せだった』
あなたは最後にそう言って私に微笑んでくれたけど、私は最後あなたにどんな顔を見せていたのかな。
きっとぐちゃぐちゃな泣き顔だったんだろうな。
最後なんだから、綺麗に笑えればよかったね。
なんて、眠るユウの枕元でつぶやいてみたけど、返事は返ってこなかった。
そして、私は退院した。