◇君に奇跡を世界に雨を◇
ねぇ、ユウ
あの雨の日、あなたが乗っていってしまった大きな白い方舟。
ちょっとした話題になったらしいよ。
空を巨大な船が飛んでいた。
なんて目撃情報が、あちこちから警察に寄せられて、ちょっとした都市伝説になったみたい。
まるで神様がイタズラしたみたいだよね。
見逃さないように目を開いていれば、確かにこの世界は奇跡で溢れているのかもしれない。
「あかりー、おかえりー!!」
「退院おめでとー!!」
久しぶりに顔を出した陸上部で、みんなからの歓迎をうけた。
「ギブスもう取れたんだ!」
「よかったねー」
ギブスに包まれていた私の足首の骨は、まるで最初からくっついていたみたいに綺麗に治っていて、お医者さんも不思議そうに首を傾げていたんだよ。
きっとこれも、神様が起こしてくれた、小さな奇跡。
久しぶりにギブスが取れ、自分の両足で地面に立つ喜びに、グラウンドの上でぴょん、ぴょん、と跳ねると
にゃ―。
どこからか猫の声。