大好きな君の嘘
笑わない男
「楽しかったえ
また 近いうちにお会いしましょな」


「そうやな またな菊!」


男が先に帰って行った



物陰で土方が、出ようかどうしようかと
悩んでいた



「バレバレですけど?なんか、ようどすか?
ひ じ か た はん!!」

気配は、完璧に消していたつもりの
土方は、ビクリと肩を上げた

「よう?元気か?悪ぃな邪魔したか?」


「邪魔って、大人しく見てただけやろ?」

「まっ まあな!!」

「土方はんは、いつも難しい顔してはるな
たまには、笑ったらよろしおますな」

「は?俺は、笑ってるぞ?」

「怒ってるか、睨んでるだけやない?
小さい子とか、逃げてくで?
琴なんて、土方はんのこと
〝声のおっきいしわしわはん〟って言うてましたえ」

「なっ しわしわはん……」

「せや?琴とうちの間では、しわしわはんって呼んでますのや
ほら 眉間がしわしわはん」

君菊がクスクス笑いながら、土方の眉間を撫でる

「やめろ!」

「うふふっ 堪忍
しわしわはんってぴったりやなぁ」








自分でも、眉間に皺が寄ると自覚しているため

大した反論もできず

君菊をギロリと睨む


にっこりと笑い


「笑っておくんなはれ?土方はん」


君菊につられ、土方が笑う




何がおかしいやら、笑い合う




「土方はんの笑った顔!初めてやなぁ!
ずっと笑っておくんなはれな」










普段笑わない二人が、取り立てて大した会話もないまま


笑いあったのだった














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