大好きな君の嘘
泣かない女
土方は、悩んでいた



というのも



芹沢の事




あの一件から、君菊が御座敷に上がっていない


芹沢がやりたい放題で

町では、押し借りをして私腹を肥やす


機嫌が悪ければ、すぐ暴力振るう



おかげで浪士組の評判は、悪くなる一方



そんなある日の夜



芹沢が大和屋に火をつけた




夜通しその対応で、ぐったり

そして、今 悩んでいる

というわけだ



昼過ぎに近藤と土方で、芹沢の処へ


すでに酔っぱらい愛人の梅は、手を焼いていた


「芹沢さん いい加減にしてくれ
死人が出なかったからよかったが
放火は、大罪なんだぞ!!」

「局長として、皆の見本であるべき姿が
このようでは、情けない!!」

「ふん!気楽なやつらだ!
土方?小楽は、土方の指図で君菊の髪を切ったと言ったぞ…
儂は、お前がどのような男か知っておる
だが…知らぬ者は、どう思うだろうな?」

「なんと……君菊に助けてもらったのに
歳のせいにするなど…」

「怪しい女だ…目をつけておかねばなぁ
どうだ?今夜、行かぬか?」




ふふんと笑い、芹沢が酒を煽る




芹沢の誘いにのり、その夜 島原へ



「すみまへん 君菊は、先客がありまして」

「ならば、そちらが済み次第こちらへ」

「……へえ 畏まりました」






店の者が出てから、芹沢が近藤に酌をし

「君菊は、今宵から復帰すると小楽が言っておった」


すると、噂の小楽が失礼しますと入ってきた


三人に酌をして、土方の隣に座る


「おめぇ なんで、嘘つくんだ?
俺は、君菊の髪を切れなんて言ってねぇ」

「言ったやないどすか?」


言った 言ってない の小競り合い中


思ったより早くに、君菊が来た


「君菊はん 聞こえた?」

「廊下まで丸聞こえやから、そらね」

「土方はんを許して下さいね」

「別に、うちは誰にも怒っておへん
小楽 あんたに一応言うとくけど

この人ら、なめとったらあかんよ」


そう言ってから、芹沢と近藤の間に座った



「早かったな」

「芹沢はんがお呼びやって、なんや真っ青になって、呼びにきたんや
大事かと思ったんやけど、違ごたね」

「久しぶりだね」

「はい 近藤はん、今日は深雪はんがこれなんだで、さみしおすな?」



土方は、元々お喋りではない

小楽は、ぷるぷる震え黙っていた




それは、反省と呼べない

怒りの震えだと、四人にはわかる



小楽が何かしでかすのは、目に見えていた






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