大好きな君の嘘
無事に出産したのは、翌日の昼過ぎのこと


へその緒をどうしたらいいやら

疲れて頭が痛くて、とにかくフラフラしながらも、以前教えて貰ったことを思い出し

必死にへその緒を切り

赤子の体を拭き布に包んだ

すやすやと眠る赤子を見て安心した

バタリ

君菊は、意識を手放した










「菊?いてる?」

君菊がいないと与一が新選組を訪ねた

山崎が、返事のない空き家を覗き

腰を抜かしそうになる

そして、事態の大変さを察する


「菊!!しっかりせぇ!!菊!!」


(赤子は、処置もしてるし大丈夫やな
って、菊ひとりで…)

「菊!!しっかりせぇよ!!産婆を呼ぶさかいな!!」

山崎が産婆を空き家に連れて来た時には

出血が酷く、君菊の顔色は白く

呼吸も浅かった



「もう少し遅かったら、死んでたで?
なんで、こんな所で産ませたんや!!」


産婆に怒られたが

一命取り留めることが出来てホッとした


(これまた……副長そっくりやん……)


君菊の産んだ女の子を見て、苦笑した


このままここに置く訳にもいかず


先に赤子を

それから、君菊を背負い屯所へ


とりあえず、土方に


「責任とってや!!」


丸投げして、三日間山崎が君菊として

仕事をすることにした



土方は、眠る君菊を撫でた


(ありがとう)



自分の子供を産む為に、どんなに心細く

怖い想いをしただろう


目覚めて、泣く赤子を必死であやす



泣き声で幹部らが大集合

「うわっ!!抱き方は、こうですよ!!」

「おしめか?」

「腹へってんじゃねぇ?」

「土方さんそっくりだな」

「なのに可愛い」



皆が赤子に夢中で、土方がため息漏らす



「土方さん この子のお名前は?」




(そうか……名前か)



「んんんんんんん……うるさっ……ひっ!」


君菊は、目覚めて固まった


「うち、なんでここにおるん!?」

「山崎が連れて来た」

「???お兄ちゃん…???」

「馬鹿野郎!!!死ぬとこだったんだぞ!
なんで、言ってくれなかった!!」

「え?大丈夫なん?沖田はん!!
こっち見せて!!」

「バカ!!死にかけたのはおめぇだ!!」

「へ?どうもないで?」

「山崎が見つけなかったら、危なかったんだ
たまたま見つけたからよかったが
死んでたら、赤子はどうすんだ!?」

「……ごめんなさい」



沖田から赤子を渡され、しっかり抱きしめ

俯いた



「まぁまぁ 母子共に無事でよかったです
君菊は、しばらく安静ですからね!」

「よし!俺が抱っこする!」

「駄目です!!首がすわってないんだから!
横にもうひとつ布団を敷いて寝かしますよ」

(なんや?沖田はん、お母さんみたいや)

「はい 横になって!」

「おおきに」

「いいえ
さぁ 皆さんでますよ!!
二人で色々お話もあるでしょうからね」







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