大好きな君の嘘
嘘をついた女
深雪も明里もいなくなった置屋

琴を御座敷に上げるべく、稽古をつける



「君菊ねぇはんみたいになりたい!!」

「うちみたいになったら、しょっちゅう怒られますのやで」

「怒られるのは、いややなぁ」

「うふふっ ほな 怒られんように
稽古しましょか」






琴が独り立ちしたら、君菊は御所の忍に戻る気でいた




ある夜






「土方さん 起きてますか?」

天井から君菊の声が聞こえ
視線をやることなく

「おう 降りてこい」

君菊の話し方から、忍として
自分のところに来たと察した


「長州浪士の潜伏場所を突き止めました
どうやら、新選組を襲撃する企てがあるようです」

「仕事で仕入れた情報か?」

「……まぁ」

「おめぇ 嘘下手だな」

「仕事で仕入れて、後をつけたんです
嘘じゃない」

「そういうことは、山崎がするから!!
おめぇは無茶するな!危ねぇだろ!!
任せろっていつも言ってんのに!!」

「せっかく教えに来たのに!!
そんなに言われるなら、一人で行けばよかった!!」


口を尖らせてそっぽ向く君菊


(コイツ、反省って言葉しらねぇのか?)


「山崎に場所を教えて帰れ」

「は?私も参加する!!
人は、殺さないけどそこそこ闘えるので」

「だから!!おめぇを巻き込みたくねぇって、言ってんだろ!!」

「???なんで???」


明里に言われたことを思い出した


(コイツ…本当に、俺の気持ちわからねぇのかよ……)


頭をぐしゃぐしゃ掻き


「こんな時に言うことじゃねぇが……」

「なら、後にして!お兄ちゃんに場所教える
それで、そのまま見張りしとくから」

「はぁーーー!! わかったよ!!行け!
くれぐれも、見張りだからな!!
勝手に乗り込むなよ!!」

「わかってる!!手柄を立てないとね!!」


(そうじゃねぇんだが……
俺が君菊を心配していることすら
伝わってねぇな……)



サッサと天井に戻っていった




(つーか、簡単に忍込まれてどうする)


自分に突っ込みを入れつつ


潜伏場所に乗り込むべく

沖田と原田の組に支度をさせた
















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