きみへの想いを、エールにのせて
プロローグ

ギリギリ入学式まで残っていた桜の花びらは、春の突風に抗うように枝を飾っていたけれど、さすがに今日のような強い風には敵わない。

その中で唯一満開のしだれ桜の前は、記念写真を撮る人の列ができていた。


今日は市立南高校の入学式。

南高校はこの辺りではトップレベルの学力を誇り、有名国立大学への進学者を毎年出している。
そのため、高校入試も難関を極め、私はやっとのことで入学資格をゲットした。


当初、ここよりひとランク低い高校を目指していたのだけど、急遽方向転換したのは、あの人――結城龍平(ゆうきりゅうへい)君が、南高校を受験すると耳にしたから。


「茜(あかね)の追い込みはすごかったね。正直言ってダメだと思ってたのに」


私の隣で容赦ない言葉を浴びせる、同じ中学出身の杉下泉(すぎしたいずみ)は、余裕で南高校に入学するほどの天才肌。

こんなことを言いながらも、私の合格を一番喜んでくれた大切な友人だ。
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