きみへの想いを、エールにのせて

それから練習が終わると、一緒に帰るようになった。


「あと3人か」

「うん。もう3週間しかないの。でも頑張る!」


せっかく結城君が戻ってきたのだから、絶対に水泳部は存続させる。


「今、香川君にお願いしてるの」

「香川? 香川って、あの?」

「知ってるの?」


同じ種目だからもしかして、と思っていたけれど、結城君は香川君の名前に反応した。


「うん。100メートルバタフライでよく一緒に決勝残ってたから。でもアイツ、たしかお父さんが開業医で、自分も医学部目指すからって、辞めたような」

「そうだったんだ」


辞めてしまったことは聞いていたけれど、そんな事情だったんだ。


「南にいるんだ」

「知らなかった?」


1学年の人数が多いと、知らない人だらけだから仕方ない。


「受験じゃ、難しいかな……」


私が思わずそう漏らすと、「そうだな」と結城君も溜息をつく。

一緒に練習をしてきた仲間にも、受験のために辞めた人は多いだろう。
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