きみへの想いを、エールにのせて

ゴールにタッチした瞬間、電光掲示板に目をやり、小さなガッツポーズをしてみせた彼に目が釘付けになった。

優勝という大仕事をやってのけたのに控えめな喜び方で、しかもプールから上がると、実に冷静にプールに向かって一礼し、審判への挨拶も忘れない。

その礼儀正しく大人びた姿が、目に焼き付いて離れなくなった。


それから目が勝手に結城君を追いかけるようになった。


「ホントに、頑張るつもり?」

「もちろんだよ。そのために勉強したんだから」


南高校には水泳部がない。
私はここに水泳部を作りたいという希望を持って、進学してきた。


「まったく……」


泉は呆れたような顔をするけれど……。


「でも、その一生懸命さ、嫌いじゃないけどさ」

「うん。ありがと」


なんだかんだ言っても、応援してくれる友達は宝物。


真っ青に晴れ渡った空は、私達の門出を応援してくれているかのよう。
フワッと吹いた風が、ポニーテールにした私の髪を揺らしていく。


「頑張るぞ」


空に向かって決意を新たにすると、新しい生活の第一歩を踏み出した。
< 4 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop