秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
「好きな人って……」

「そう…私より少し年上で、小さいけれど会社を経営してる素敵な人よ…」

瑠威は唇を噛んで俯く。



「……もう一年ほど前からお付き合いしてたの…
彼にもあなたのことは相談したわ。
別れたいと思ってるって……」



瑠威の身体が震えていた。
俯いたまま、彼は何も言わず……



(瑠威……)



突然、彼は踵を返すと、そのまま外へ飛び出して行った。



玄関のドアが乱暴に閉じられる音が響いて……



私はすべてが終わったことを悟った…



(瑠威……)



こみ上げる熱い涙を私は止めることが出来なかった。
愛しさと苦しさで、今にも胸が張り裂けそうだった。



でも、これで良い…
私は瑠威のために出来るだけのことをやれた…



無理にそう考えた。
これでもう瑠威の邪魔をすることもない。
彼はきっと幸せになれる…



止まらない涙の海に沈みながら、私はただ瑠威の幸せだけを祈った…



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