蛇の家
出生
 父はその家に長男として誕生した。昭和24年12月5日。
父には姉がいたようだが、当日育児と畑仕事を同時に行っていた祖母が、授乳中誤って窒息死させてしまったときいた。
山奥にある墓場の、あの小さなお地蔵さんがその姉だと知ったのはかなりあとである。
その、私から見たら叔母に当たる人物が生きていたら、もしかして今違う状況だったのかもしれない。
祖母のお父さん、私の曾祖父に当たる人物が当時は相当の権力を持った人物であったようだ。
曾祖母は、胃ガンで亡くなったと聞いたが当時は胃に出来物ができたといいつつも、病院にもいかずに痛みに耐えたと言う程の根性の持ち主で、相当厳しい曾祖母だったらしい。
当時は裕福だったその家に、隣村から招かれ結婚したのが祖父である。要は婿入りだったらしい。
父はそんな家系に長男として誕生した。
 生まれてすぐに父は曾祖母と曾祖父に育てられることになった。長女を窒息事故で亡くした祖母に、
父をまかせられなかったのだという。

物心ついたときから父は曾祖母の厳しさを感じていた。曾祖母は婿入りした私の祖父を嫌っており、祖父の悪口を言えば、曾祖母からお小遣いがもらえるような状況に慣れてしまっていた。
当時の事を振り替えって父がボソッと呟いたのを聞いたことがある。
「親父はかわいそうだったなあ」


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