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『…な…ッ』


痛い。苦しい。


この二つの単語がクリスの中を駆け巡る。


『今までご苦労、我が末裔よ
 貴様は憎き兄にしか見えぬ
 目障りだ、死ね』


冷たい言葉を投げかけられても、悔しいとも思えない。


…ただ、痛くて、苦しかった。


『あ…が…ッ…
 ハァ……ウッ…うぅ…!!!』


呼吸が荒くなる。


誰に言う訳でもなかった。ただ、自然に口が開いてこう言った…


『死にたく…ない…』


その言葉を聞いたのか、男が再び近寄る。


クリスを虫の屍骸に向けるような、冷え切った眼を向けて、右手に闇の波動を集めた。


『そこまでだよ!!!』
『クリスくんッ!!!』


“紅雷の魔女”ジェイナと、“森生<シンセイ>の魔女”アスカ・ユグドラシルが大神殿前に姿を現す。


『あらら…魔女さんか』


ジェンが溜息をつく。


男は魔女から視線をクリスに戻すと、闇の波動で形作った漆黒の刃を空に掲げ、振り下ろした。


『やめろォォ!!!』
『クリスくん!!!!』


魔女二人がそれを阻止しようとするが、その道をジェンが防ぐ。


『邪魔しちゃダメだよ』


『どきなさい!!!!!』


アスカの叫びが、無常に空に響き渡った…。
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