As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー




「んん!?」



悠太の唇が、私の唇に重なる。



初めてのキス。



熱くて、溶けそう。



「んっ……」



無理矢理なのに、不思議と嫌じゃない。



親しい仲だから、そう思うの……?



しばらくして、悠太の温もりが消えた。




「っは……ゆ、悠太……?」




でも、いきなりキスするなんて……。




「千代、嫌じゃないの?僕にこんなことされてさ」




「……嫌じゃない。でも、どうしてこんなことするの?」




「わからない?」



悠太の歪んだ表情が、胸を締め付ける。



「……っわからないよ」



本当は少し気づいてる。



でも、心のどこかで、戸惑う気持ちがあって、自分が口にしてしまうのが怖かった。




「千代を困らせちゃったかな」




「……困ってない。全然困ってないよ。ねぇ、悠太の言葉で教えて?」




「今のは忘れて……なんて無理矢理かな。今は、僕も役に集中しなくちゃ。さ、……戻ろうか」




私が求めた答えは帰ってこなかった。




そのまま戻ると、流くんは私達の様子を伺っていた。




「ごめん、流くん!もう撮影が始まる?」




悠太は、さっきみたいな暗さは見せずに、明るく振る舞った。



何事も無かったかのように。



「ああ、もうすぐ始まる」




「僕は最初は待機だよね」




「じゃあ、私達はスタンバイしよっか」




メイクさんが、軽くメイク直しをすると、カメラだらけの教室に入った。




カメラが回ると、私はさっきのことを胸に閉じ込め、役になりきった。




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