あなたにキスの花束を



「すみません、わざわざありがとうございます。それと、助けて頂いてありが」



真っ当な御礼の言葉を口にし掛けた私が再び固まったのは。

彼の指がするりと私の手指に絡まり、自然に繋がれたからだった。
私の頬に一気に血が上る。何これ。

彼はとても自然に、繋いだ手をそのまま彼のコートのポケットに収めてしまった。



「繋ぐならこの方が歩きやすいし、これならお互い温かいだろ。ね、美咲ちゃん、少しだけ、俺に付き合ってもらっていいかな」



彼のポケットの中で絡む指は互いに組み合わされて、いわゆる恋人繋ぎになっている。

それで王子にそんなお願いをされたら、女として頷くしか選択肢は無いんじゃなかろうか。

どうせ帰ってもあとは小学生のようにお風呂入って歯を磨いて寝るだけだもの。

それに折角だから、もう少しだけ夢を見させてもらいたい。

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