あなたにキスの花束を



「だから! 私は! 忙しいって! 言ってるじゃないですか…!」



いちいち文節を区切って言わないと日本語が通じない相手に出会ったのは久し振りだ。

冬の夜。週末を控えて賑わう街角。

私、橘美咲(たちばなみさき)は合コン帰りである。

女友達のツテで呼ばれた男女3対3の合コンだったが、私は昔から万事において何かとハズレを引くように出来ていて、その不運は合コンでもブレなかった。

一人、男性側にとても綺麗な顔立ちの王子様のような人が居たけれど、座った席からしてその人とは一番遠い位置で、話すらまともに出来ない有様。

それどころか思いも寄らぬ相手に言い寄られ、理由をつけて早々に逃げ帰っている最中だったのだ。

いいんだ。思い通りに行かないのは慣れている。

合コンなんてそんなものだと諦めて、賑やかな街並みを早足で歩いていたら、ホストクラブの客引きに出くわした。

派手な金髪を長めに垂らした青年が近付いてきて、「お姉さん一人?」から始まって、どんなに振り切ろうとしても諦めてくれない。

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