正しい紳士の愛し方


時刻を確認する流れのままSNSを開く。


親友とのトーク画面。



満に知らせた方がいいよね。



心配かけちゃったし……



『この間はひどい態度とってごめん。あれから色々あって、ちゃんと話して、大和さんとお付き合いさせて頂くことになりました。
詳しくはまた後日改めて……(*^▽^*)』


送信。


メッセージを送ったタイミングで注文していた飲み物が届く。


メールは数分も経たず既読となり、すぐに満から着信が入った。


「もしもし、この間はごめ……」


電話を受けて第一声で謝罪を述べようとした樹だが、彼女からの『おめでとう、樹』という言葉にかき消されてしまった。


樹の涙腺が緩む。


「ありがとう……」


声を詰まらせながら感謝を述べた。


『諦めなくて良かったね』


「うん……」


自分の手で消しかけた恋心。


もし、あの場で本当に消えてしまっていたら、今とまったく異なる意味の涙をずっと流していたにちがいなくて。


< 105 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop