正しい紳士の愛し方


「アタシ、やっぱ行けないよ……」


樹は招待状をサイドテーブルにソッと置く。


そして、内線電話のそばにあるボールペンとメモ用紙を取った。


メモ用紙の上にボールペンの先を滑らかに走らせる。



“ 大和さんへ


昨日はありがとうございました。


せっかくお招き頂いたけど行けないと思うので……招待状、大和さんから百合さんに返して下さい。


ごめんなさい。


また、連絡しま…… ”



樹はメッセージを書いている途中で手を止めてしまった。


書きかけのままになってしまっている最後の一文を無かったことにしようとペリペリっと丁寧に切り離す。


小さな切れ端は樹の手でクチャクチャに握られ、そのままポケットに隠された。


その代わり、置手紙の空いたスペースに” さようなら ”と一言添える。



これでいい……。



自分にきつく言い聞かせた。



誰も幸せになれない恋はもう終わりにしないと――…



別れのメモと招待状を残して、樹はホテルの部屋を後にした。



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