そこには、君が







「あー!美味しかったぁ」






「リピート決定だね」






お腹を摩りながらお店を出た。


少し多めに出してくれた凛に、


ありがとうとお礼をする。


近くの自販機でジュースを買い、


飲みながら2人で家へと向かった。








「ちゃんと謝んなよ?」







「んー、気が乗ったらね」







明日は学校はお休み。


来週また学校で、と別れた。


今日は長めにお風呂に入ろう。


大和、足大丈夫かなあ。


スキンケアもしておこう。


大和、いつまで歌うつもりなんだろう。






「情けない…」






結局どれだけ怒っていても、


大和のことが頭から離れず、


モヤモヤし続けた。


それはお風呂に入っても変わらない。


スッキリするかと思って長風呂してみたけど、


どんどん募る一方だった。






「はあ…」






溜め息が溢れる。


時計を見れば時刻は23:13。


あと47分で私の生まれた日は終わる。


もう諦めよう。


電話しようかとも思ったけど、


そこまでしても何も変わらないなら、


するだけ無駄かとも思った。






「寝ようかな」






欠伸が1つ出た時。


携帯が震え、音を放った。


少し離れた場所にある携帯はすぐに


見つからず、私はどこから音がするかを


探すのに必死で身動きが取れなかった。


さっき携帯、どこに置いたっけ。


近くにあると思っていただけに、


焦りまくるのが自分でも分かる。


…そうだ、お風呂場だ。


そう思い出して走ったが、


携帯を見つけた瞬間、音が止んだ。


画面には、通知が1件。


【不在着信:大和】


大和だ。


大和から、電話だ。








「かけ、直さなきゃ…」






いつも使っている携帯。


使い方なんてお手の物なはずなのに、


いつものパスワードが分からず、


入力を間違えてしまった。


動揺が表に出ている。


何とかしないと、と。


そう思っていた時。


またもう一度、


着信が鳴った。


画面に映ったのは、


大和の、名前だった。







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