そこには、君が






年越しは、


引越しの準備で大忙しだった。





「ね、大和。これ必要かな?」





「絶対いる」





大和の部屋の荷物を整理する。


お互いの両親には、


少しの間の同棲のことは


内緒にすることになった。







「明香、これ絶対いらないだろ」






「絶対絶対必要です」






私の家の荷物はほとんどそのまま。


私が留学することになっても、


日本に帰ってきた時の家が必要なので、


そのままにしておくようだ。


だから私の最低限の荷物だけを、


持ち運ぶのだが、取捨選択が苦手なのか、


ほとんど部屋にあるものを箱に詰めていた。







「これ可愛い」





「あ?そんなもん、何でもいいだろ」






食器を2人で選びにも行った。


水玉のお揃いのお茶碗や、


いちご柄のガラスのコップ。


気付けば私の趣味になっていて、


大和は全てを許容してくれた。






「これは?」




「もういいからそれにしろよ」




「何、その適当なの」




「お前が選ぶもんに文句なんかねえよ」






何も言えなくなり、


私は無我夢中で必要なものをカゴに入れた。


歯ブラシ、歯磨き粉、食器洗剤、スポンジ。


お互いのバイト代やお小遣いを使い、


少しずつ生活に必要な物を揃えていった。


住み始めるのは、3学期開始の2日前なので、


1月9日から。


その日は買ったものを全て運ぶ。


親の力は使わずに、2人で引越しを進める。







「重くないか?」





「平気…っ」





家電は新品ばかりも揃えられないので、


中古でも良品を探して買った。


唯一、冷蔵庫は大和のお父さんが


独立祝いだと買ってくれたらしい。


全て9日の朝に届くように手配済みで、


新居に到着すると既にトラックが停まっていた。





「奥さん、これ、どこに置きましょう?」





「えっ、あ…ここにお願いしますっ」






奥さんと言われて、反応に困った。


結婚している訳じゃないし。


でも、ちょっと嬉しい気もするけど。






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